人生を輝かすことが出来るのは即物的な欲望達成プロセスや結果ではなく、人間の想像力だけである。
仕事、恋愛、結婚・遊びについての想像力を研くには学校の教科書、大学受験勉強だけでは不足というよりは片手落ちである。
それらが本当の学問に程遠いことを常識として知ることから出発して、相当努力しない限り想像力を自分のものとすることは出来ない。
その想像力は、その無能感を感じるうえで「死んだ後の自分」というものを自分自身の現在の意味を知るための想像上の観測点として思い描く習慣を持つことで始めてゲットできるものである。
死への覚悟が無い限り、生きる意欲は生じない。
勿論自分を殺すのと死ぬのとは違う。
今の自分をとりまく人間関係がどれほど複雑で、錯綜していて不可解でも「死んだ後の私」を想定しうる私にとって、それは生きる経験の愉悦を増しこそすれ、それを減殺するものではない。(街場の現代思想 内田樹 文春文庫)
死と直面してみよう。それは時間を手中に生きることかも知れない。
令和5年3月19日
廣 田 稔