五代は映画の最後に大阪商法会議所で「地位か名誉か金か、いや大切なのは目的だ」と大声をあげている。その目的の意味は何であろうか?
五代は市民的成熟を経済活動に要求した。五代は経済活動とは恒常的な交換のサイクルを創出し、それを維持することを通じて、人間の成熟を支援するための仕組みであると叫んでいる筈である。
単なる訓示や、他者の成功例を模倣せよと言っているのではない。
交換活動を安定的に行うためにはまず市場、交通路、通信網を整備し、共通の言語、通貨、度量弊、商道徳などを作りだす必要がある。そして交換活動の安定的で信頼できるプレイヤーとして認められるためには、約束を守る、嘘をつかない、利益を独占しないといった人間的資質を備える必要があるとつまり、真の経済活動をせよ!と言っている。
人間には、生きる目的はない、偶然なる生存があるだけである。
韓非子の矛盾という言葉の成り立ちその武器商人の話を単なる笑い話であると理解してはならない。韓非子は自分の経験則の縛りから逃れある程度の時間意識を自己の中に取り入れろと、つまり大人になれと!警告したのである。
五代は「金儲けの目的が自己利益を自己威信の増大だけでは、人間たいした知恵も湧きません。何のために経済活動をするのか、その目標を見失っていては、何もうまくいかずどんどん落ち目になっていきますよ」と警告を発しているのである。
令和2年6月6日
廣田 稔