ドナルド・トランプ及びイギリスのEU離脱支持者は人間という種全体を視野に入れたビジョンを何一つもっていない、SDGsが目標とした世界の将来を全く考えていない。そのトランプの弾劾裁判が昨日、有罪支持47票、無罪支持が53票で無罪評決となったのである。アメリカの自由民主主義が少しでも機能しておれば自浄できるものと期待していたのであるが・・・
国民投票や選挙の実態は人間の合理性に問いかけるものでなく、感情に問いかけるものである。しかし、民主主義では人間の感情は深遠な「自由意志」を反映していると決めつけ、それを権限の源泉であるとして知能の高さは別としてあらゆる人間が等しく自由であるという(本来はあるべしと言うべき)前提としている。しかし、国民の多くは自らの内に内在すべき、あるいは内在している自由意思を探す努力をせずに、自らの感情で選挙権を行使している。
現代では多くがITからの情報に影響されているというが、その範疇から全く逃れられていない。人間の能力で大切なのは情報判断能力であるが、その育て方が今の教育界において充分させられているとは思えない。だからと言って何でも多数決で決めれば良いというものではない、多数決によっては何も生まない、正義にも近ずかない、単なる人間が深い意味を考える事を放棄した相対的(つまりはいいかげん)な理屈である。
多数決の原理という言葉を使って、イギリスの哲学者ジェレミーベンサムの考え方の様に言われているが全くの誤解である。ベンサムは18世紀の末に至高の善は「最大多数の最大幸福」であると断言し、国家と市場と科学界の唯一の価値ある目標は全世界の幸福を増進することであると結論したのである。あくまでも誰よりも幸福な生活を楽しめるようにと全世界の幸福を増進させることを目指したのである。
人間が自由民主国家制度の恩恵に浴したいと思うなら学び、年老いても学び、己の中にある深遠なる「自由意志」を探し、無ければ己でもって構築する必要が大である。そうでないと今や危機に瀕している自由民主国家は全滅する。
令和2年2月6日
堺の裁判所にて 廣田 稔